①ー13.14

◆漢文(原文)
爾時世尊。四衆囲遶。供養恭敬。尊重讃歎。為諸菩薩説大乗経。名無量義。教菩薩法。仏所護念。仏説此経已。結跏趺坐。入於無量義処三昧。身心不動。

是時天雨曼陀羅華。摩訶曼陀羅華。曼殊沙華。摩訶曼殊沙華。而散仏上。及諸大衆。普仏世界。六種震動。

爾時会中比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。天。竜。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩・羅伽。人非人。及諸小王。転輪聖王。是諸大衆。得未曾有。歓喜合掌。一心観仏。

▲訓読よみ
爾の時に世尊、四衆に圍繞せられ、供養・恭敬・尊重・讃歎せられて、諸の菩薩の為に大乗経の無量義・教菩薩法・仏所護念と名くるを説きたもう。仏此の経を説き已って、結跏趺坐し無量義処三昧に入って身心動したまわず。

是の時に天より曼陀羅華・摩訶曼陀羅華・曼殊沙華・摩訶曼殊沙華を雨らして、仏の上及び諸の大衆に散じ、普仏世界六種に震動す。

爾の時に会中の比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷・天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩羅伽・人非人及び諸の小王・転輪聖王、是の諸の大衆未曽有なることを得て、歓喜し合掌して一心に仏を観たてまつる。

◎現代語訳
その時に、世尊(お釈迦さま)は、四衆(比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷)の人たちの期待の中、囲いめぐらされ、供物を捧げられ、尊敬され、褒め讃えられました。そこで世尊は多くの菩薩のために「無量義・教菩薩法・仏所護念」という大乗のお経(無量義経)を説かれました。 仏(お釈迦さま)は、この経(無量義経)を説き終わって、結跏趺坐され、無量義三昧に入って、心身ともに動じられませんでした。

この時に天から曼陀羅華・摩訶曼陀羅華・曼殊沙華・摩訶曼殊沙華といわれる花が雨のように降りそそぎ、仏さま(お釈迦さま)や大勢の人々の上に散り落ち、仏さま(お釈迦さま)は普くこの世界を六種に震動しました。

その時に、会座にいた僧侶・尼僧・男性信者・女性信者・天・竜・夜叉・乾だつ婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩ご羅伽など、人間や人間以外のすべての生き物、および多くの小国の王・転輪聖王は、この未だかつてない出来事に遭って、歓喜し合掌して一心に仏さま(お釈迦さま)を見たてまつりました。

★そのこころは??
冒頭の「無量義経から法華経の世界へ」でも、無量義経説法品第二の「四十余年未顕真実」についてふれましたが、無量義経以前の教え(爾前経)は真実をまだ顕していない教えであり、この経の教え(無量義経)で真実を顕そうとお釈迦さまはお説きになられました。  それでは、どのような教えの違いがあるのでしょうか?

無量義経以前の教え(爾前経)は、歴劫修行(無限の修行)によって成仏(仏になる)できると説かれました。ちなみに歴劫修行の期間とは「三年に一度、天女が天から降りてきて、富士山ほどの大岩を天女の衣で一擦り(ひとこすり)して天に昇っていかれる。また三年に一度降りてきて、天女の衣で一擦り。またまた三年に一度降りてきて、天女の衣で一擦り。そしてその大岩がすり切れて無くなってしまう時間が一劫」それが何回、何十回、何百回、代々続くことを歴劫といいます。

無量義経の教えとは、人を救う力が偉大で功徳に優れているので、成仏に到る期間が短く、開経である無量義経・本経である法華経・結経である仏説観普賢菩薩行法経を修行する者は、速やかに成仏(仏になる)できる。すなわち、即身成仏(そくしんじょうぶつ)が説かれているのです。その中でも本経である法華経の功徳は最も優れていて、お釈迦さまの真実の教えが説かれているのです。

さて皆さんは、どちらの修行をしたいですか?

どちらの教えを信じたいですか?


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(柴又帝釈天題経寺の彫刻「妙法蓮華経序品第一」と、王舎城があったラジギール)

※注釈

●世尊(せそん) 仏の十号(十の呼び方)の一つで、「世の中で最も尊いお方」という意味です。
お釈迦様のことです。

●四衆(ししゅう) 寺院等でのご回向の中にある難しい言葉では、発起影向当機結縁(ほっきようごうとうきけちえん)の四衆と言い、

①比丘(びく)男性の僧侶
②比丘尼(びくに)女性の僧侶
③優婆塞(うばそく)男性の仏教信者
④優婆夷(うばい)女性の仏教信者の事です。

(右写真上は、柴又題経寺序品之図)
(右写真下は、お釈迦様説法の場、霊鷲山)

●大乗の無量義・教菩薩法・仏所護念(だいじょうのむりょうぎ・きょうぼさっぽう・ぶっしょごねん)

法華三部経の開経である無量義経のことで、量ることのでき無い意義・菩薩を教化する法・仏が念い(おもい)護る所の教えという意味です。
法華経とは、開経である「無量義経」・本経である「妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)」・結経である「仏説観普賢菩薩行法経(ぶっせつかんふげんぼさつぎょうぼうきょう)」から構成され、「法華三部経」といわれます。
ここにでてくる「無量義経」とは、

①無量義経徳行品第一
②無量義経説法品第二
③無量義経十功徳品第三

で構成されています。

①無量義経徳行品第一とは、菩薩の利他行(自分以外の為に尽くす修行)の功徳とお釈迦さまの人格を褒め称えられている章です。

②無量義経説法品第二とは、諸仏はどのような法(教え)を説かれたかを述べた章です。

③無量義経十功徳品第三とは、無量義経には十種類の不思議な功徳の力があることを述べた章です。

ryousen2●結跏趺坐(けっかふざ)
「跏(か)」は足の裏、「趺(ふ)」は足の甲、足の表裏を結んで坐するという意味です。
仏道修行の時の座り方で、左右の足の甲をそれぞれ反対側の股(もも)の上において、足の裏が上向きになるようにすること。片足の場合を、半跏趺坐(はんかふざ)といいます。

●三昧(さんまい)
定・正定・等持などと訳す。心が一つに集中して動揺しない状態を言います。

●曼陀羅華(まんだらけ)
天上に咲き、見るものの心を喜ばせるという花です。

●摩訶(まか)
大きいという意味です。

●曼殊沙華(まんじゅしゃげ)
天上に咲き、見るものの心を柔軟にするという花です。

●普仏世界(ふぶつせかい) 仏が統括している(治めている)世界のことです。

●六種震動(ろくしゅしんどう)
仏が説法する時に大地が六通りに震動した瑞相を言います。動(一方に動く)、起(ゆれる)、涌(涌き起こる)、撃または覚(爆音)、震(うねり)、吼(大音響)といわれています。 別説として、東西南北上下がそれぞれ六種に震動し、今までに起きたことのないほどの

●夜叉(やしゃ)
凶悪で人に危害を与える鬼人ですが、仏教では天竜八部衆のひとりとして仏教守護の鬼神とされています。

(右写真は、結跏趺坐像と金剛夜叉明王像))
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●摩ご羅伽(まごらが)
大蛇のことで、天竜八部衆のひとりとして仏教守護の蛇神とされています。

●小王と転輪聖王(てんりんじょうおう)
小王とは武力によって統治支配をしている国王を指します。転輪聖王とは古代インドの理想的国王で、武力によらず正義をもって全世界を治めるといわれています。仏伝でお釈迦さまは、生誕時に出家しなければ転輪聖王になると預言されました。

(右写真は、国宝・摩ご羅伽像))