①ー5.6

◆漢文(原文)
其名曰。文殊師利菩薩。観世音菩薩。得大勢菩薩。常精進菩薩。不休息菩薩。宝掌菩薩。薬王菩薩。勇施菩薩。宝月菩薩。月光菩薩。満月菩薩。大力菩薩。無量力菩薩。越三界菩薩。颰陀婆羅菩薩。弥勒菩薩。宝積菩薩。導師菩薩。如是等菩薩摩訶薩。八万人倶。

爾時釈提桓因。与其眷属二万天子倶。復有名月天子。普香天子。宝光天子。四大天王。与其眷属万天子倶。自在天子。大自在天子。与其眷属三万天子倶。娑婆世界主。梵天王。尸棄大梵。光明大梵等。与其眷属万二千天子倶。

▲訓読よみ
その名を文殊師利菩薩、観世音菩薩、得大勢菩薩、常精進菩薩、不休息菩薩、宝掌菩薩、薬王菩薩、勇施菩薩、宝月菩薩、月光菩薩、満月菩薩、大力菩薩、無量力菩薩、越三界菩薩、颰陀婆羅菩薩、弥勒菩薩、宝積菩薩、導師菩薩、かくのごとき等の菩薩摩訶薩、八万人と倶なり。

その時に釈提桓因、その眷属二万天子と倶なり。また名月天子、普香天子、宝光天子、四大天王あり。その眷属万の天子と倶なり。自在天子、大自在天子、その眷属三万の天子と倶なり。娑婆世界の主、梵天王、尸棄大梵、光明大梵等、その眷属万二千の天子と倶なり。

◎現代語訳
その名を文殊師利菩薩、観世音菩薩、得大勢菩薩、常精進菩薩、不休息菩薩、宝掌菩薩、薬王菩薩、勇施菩薩、宝月菩薩、月光菩薩、満月菩薩、大力菩薩、無量力菩薩、越三界菩薩、颰陀婆羅菩薩、弥勒菩薩、宝積菩薩、導師菩薩といい、その他に8万人の菩薩さま方といらっしゃいました。

その場には釈提桓因(帝釈天)が二万の天子を従えていました。また名月天子、普香天子、宝光天子、四大天王が1万の天子を従えていました。自在天子、大自在天子は三万の天子を従えていました。娑婆世界の主である梵天王、尸棄大梵、光明大梵等は1万2千の天子を従えていました。

★そのこころは??
菩薩さまが多く見受けられます。菩薩とは仏の次の位です。 仏の教えに従い、人々の救済の為に、それぞれの特性を生かし活躍するのです。 「菩薩さまのように、困っている人がいたら自然と手を差し伸べられる心とそのゆとりを持つことが大切なのですよ。」お釈迦さまは菩薩さまの救済の姿を通して、人々に教えを説いたのです。 「○○菩薩は○○の御利益がある!」と、よく耳にしますが、手を合わせればその救いを得られる・・・そうではないのですね。 人のために尽くされた菩薩さまのお姿は私たちのお手本と言って良いでしょう。

天界の方々のお姿が見受けられます。ご存知のお名前も多いのではないでしょうか? 帝釈天(釈提桓因)は柴又題経寺が有名です。
四天王は仏教の守護神として多くの宗派でおまつりされていますが、日蓮聖人は法華経で東の持国天、北の毘沙門天(広目天)の二天が守護の誓いを立てられたことに注目されています。

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(柴又帝釈天題経寺の彫刻「妙法蓮華経序品第一」と、王舎城があったラジギール)
※注釈

●文殊師利菩薩(もんじゅしりぼさつ)
「三人寄れば文殊の智恵」こんな諺聞いたことありませんか?
文殊師利菩薩は文殊菩薩とも言われ、智慧を司る菩薩として崇められているところもあります。
仏道でいう智慧とは、知識や教養ではなく、心を穏かに保ち続けることが出来るのが仏道では智慧と言います。
文殊菩薩は法華経においてお釈迦さまのご説法する大切な場面に関わり、そこに集まっている方々の為にお釈迦さまにご質問を投げかけます。智慧があるからこそ、自分以外の方の為にもお釈迦さまからお話を聞き出せるのですね。
仏像では文殊菩薩は釈迦仏像の脇侍として獅子に乗り、象に乗る普賢菩薩と対になっています。

●観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)
観自在菩薩とも言われます。
観音さまと言えば聞き慣れているでしょう。
古くから観音信仰は広まっております。
法華経の第25番目に『観世音菩薩普門品』として展開されます。
「観音力念じれば様々な難を逃れられる」そう記されています。
それを受けて、日本の観音信仰は起こったように思いますが、良く読んでみますと、このお釈迦さまのお言葉は観音さまの力を信じなさいというものではありませんでした。観音さまは人が難あるところに助けに行く慈悲深い菩薩であったことを示されたのです。そこにいた聴衆は観音さまの慈悲から菩薩の心を学ばれ、自らもそうありたいと誓ったのでした。

●得大勢菩薩(とくだいせいぼさつ)
大勢至菩薩や勢至菩薩とも言われます。
法華経では第20番目の『常不軽菩薩品』に登場します。
そこでは常不軽菩薩の修行が説かれています。
どんな人にも手を合わせ、敬いの心を表しました。が、全ての人が受け入れてくれるわけでは無く、時には暴力を振るわれ追い払われることもありました。それでも常不軽菩薩はそれにめげずに礼拝行を続けました。
得大勢菩薩の得大勢とはお釈迦さまの教えを多くの人に広める力を得たという意味です。お釈迦さまはきっと常不軽菩薩の「人を敬う心」を広める為に、得大勢菩薩に託されたのでしょう。

●常精進菩薩(じょうしょうじんぼさつ)
法華経では第19番目の『法師功徳品』に現われ、お釈迦さまから法華経修行による六根清浄の功徳を教えられます。

kokuuzou●不休息菩薩(ふくそくぼさつ)
休まない菩薩さまという意味ではありません。
常に人を救う為に仏道を励んでいる菩薩さんです。

●宝掌菩薩(ほうしょうぼさつ)
手のひらに宝を出し、人に施す菩薩さまです。

●薬王菩薩(やくおうぼさつ)
法華経では薬王菩薩は度々その前世での修行の姿がお釈迦さまから語られます。
特に過去世における焼身供養は有名です。自らの身を焼いてまで人を救済したのです。
身も心も仏に捧げ、仏道を歩まれたからこそ、勇施菩薩の脚注にもあるように、法華経を信じる人を守ろうとするわけです。

(右写真は、虚空像菩薩坐像)

●勇施菩薩(ゆうぜぼさつ)
人々にお釈迦さまの教えを広める為には力を惜しまないので勇施菩薩と名付けられました。 また薬王菩薩、四天王の毘沙門天、持国天と共に法華経の第26番目『陀羅尼品』に現われ、法華経を信じる人をお守りすることを固く誓います。

●宝月菩薩(ほうがちぼさつ)

●月光菩薩(がっこうぼさつ)
日光菩薩と共に薬師如来の脇侍です。

●満月菩薩(まんがちぼさつ)

●大力菩薩(だいりきぼさつ)

●無量力菩薩(むりょうりきぼさつ)

●越三界菩薩(おっさんがいぼさつ)

●颰陀婆羅菩薩(ばつだばらぼさつ)
入浴の供養を受けた際に悟りを開いたと言われています。

●弥勒菩薩(みろくぼさつ)
阿逸多(アイッタ)の愛称を持つ。 お釈迦さまが亡くなった56億7000万年後に兜率天という天上界から娑婆世界に生まれ、悟りを開き、仏となり、人々の救済をすると言われています

●宝積菩薩(ほうしゃくぼさつ)
維摩経というお経ではお釈迦さまの元に集まり、教えを頂こうとする方々の為にお釈迦さまと問答をされました。

●釈提桓因(しゃくだいかんいん)
帝釈天とも呼ばれ、娑婆世界の上の天界の主で、梵天と共に仏教守護の善神とされています。

●名月天子・普香天子・宝光天子
月と星と日を神格化し、三光天子とも言われます。 古来より、人は日月星を崇拝してきました。三光天子はお釈迦さまが教えを説かれる場所を普く照らされています。

●四大天王(しだいてんのう)
東の持国天、南の増長天、西方の広目天、北の毘沙門天(多聞天)を指します。 四天王は仏教と教えを信じ従う人々を守護します。 のちの『陀羅尼品第二十六』にて東の持国天と北の毘沙門天の二天が法華経を弘める者の守護を誓います。

●自在天子(じざいてんじ)
欲界とは地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界の一部を指します。欲にとらわれた者が住む世界が欲界です。その最上界は化他自在天といい、自在天子はそこを住処とします。 お釈迦さまが瞑想中に邪魔をしに来たという逸話があります。

●大自在天子(だいじざいてんじ)
ヒンズー教のシヴァ神が仏教化した天人で色界の最上界である色究竟天(阿迦尼咤天、あかにたてん)が住処です。色界とは欲を離れた清浄な世界を言います。

●梵天王(ぼんてんのう) ヒンズー教の神、ブラフマーが仏教化した天人。お釈迦さまが悟りを開かれた時に教えを広められるようにと要請したのを受けて、仏教を守護する善神として帝釈天と対に崇められています。

●尸棄大梵(しきだいぼん)

●光明大梵(こうみょうだいぼん)