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◆漢文(原文)
其名曰。阿若隠陳如。摩訶迦葉。優楼頻螺迦 葉。伽耶迦葉。那提迦葉。舎利弗。大目嬰連。摩 訶迦旃延。阿傾楼駄。劫賓那。隠梵波提。離婆 多。畢陵伽婆蹉。薄拘羅。摩訶拘泣羅。難陀。孫 陀羅難陀。富楼那弥多羅尼子。須菩提。阿難。 羅疫羅。如是衆所知識大阿羅漢等。

▲訓読よみ
その名を阿若隠陳如・摩訶迦葉・優楼頻螺迦 葉・伽耶迦葉・那提迦葉・舎利弗・大目嬰連・摩 訶迦旃延・阿傾楼駄・劫賓那・隠梵波提・離婆 多・畢陵伽婆蹉・薄拘羅・摩訶拘泣羅・難陀・孫 陀羅難陀・富楼那弥多羅尼子・須菩提・阿難・ 羅疫羅という。かくのごとき衆に知識せられたる大阿羅漢等なり。

◎現代語訳
その名前は、阿若隠陳如・摩訶迦葉・優楼頻螺迦 葉・伽耶迦葉・那提迦葉・舎利弗・大目嬰連・摩 訶迦旃延・阿傾楼駄・劫賓那・隠梵波提・離婆 多・畢陵伽婆蹉・薄拘羅・摩訶拘泣羅・難陀・孫 陀羅難陀・富楼那弥多羅尼子・須菩提・阿難・ 羅疫羅という、人々を教え導くことに精進をしてきたことで、人々に良く知られた大阿羅漢でした。

★そのこころは??
ここで登場される聴衆は声聞(しょうもん)といわれ、お釈迦さまの説法、すなわち「声」を直接聞いた方達です。
現在の私たちは直接お釈迦さまの声は聞けません。しかし、皆さんの「信じる心」によって、法華経の一文字一文字がお釈迦さまの声になるのです。さあ耳を澄ましてみましょう!
皆さんは、お盆のお施餓鬼(せがき)のいわれをご存知ですか? 実は、ここに登場される大目揵連さんのお話しです。
昔、大目揵連(目連)さんは、亡くなったお母さんがどうされているか神通力で探しました。見つけたところは、食を貪った罪で餓鬼の世界にいました。お釈迦さまに相談したところ、餓鬼の世界に食物を施し、お経を読誦して心から供養しなさいといわれました。その行いにより、大目揵連(目連)の母は、苦しみから逃れることが出来ました。
現在のお施餓鬼というのは、餓鬼の世界に施した功徳(善い行い)をご先祖様に回向(回し向ける)し供養するという意味で、お盆の大切な行事になっています。

(柴又帝釈天題経寺の彫刻「妙法蓮華経序品第一」と、王舎城があったラジギール)

※注釈

●「阿若憍陳如」(あにゃっきょうじんにょ) お釈迦さまが、初めて仏教の説法(初転法輪)をされたのを聞いた五人の僧侶のひとりです。 特にお釈迦さまの教えを理解したので、阿若(アニャ=良く了解した)がつきましたが、単に「橋陳如」と記される場合が多いようです。

●「摩訶迦葉」(まかかしょう) 摩訶とは、優れた・偉大な・大きいという意味で、大迦葉とも記され、お釈迦さま滅後の教団の指導者となりました。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、頭陀第一(衣食住に対する欲望を払いのける・粗衣粗食)といわれています。

●「優楼頻螺迦葉」(うるびんらかしょう) 優楼頻螺は、マガダ国(古代インド十六大国の一つ)ガヤ城(現在のブッダガヤ)付近のナイランジャナー川左岸の村の名前で、そこに住んでいた三人の迦葉の長男です。

●「伽耶迦葉」(がやかしょう) お釈迦さまの悟りの聖地であるブッダガヤ(インド東部現在のビハール州)のガヤ(象頭山)の城内に住んでいた三人の迦葉の三男です。

●「那提迦葉」(なだいかしょう) ブッダガヤのナイランジャナー川の下流に住んでいた。三人の迦葉の次男です。 ナダイとは、河川の意味です。

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●「舎利弗」(しゃりほつ) 舎利は、鳥の「鷺」(さぎ)を意味し、弗は、「子供」を意味するので舎利子とも呼ばれます。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、智慧第一(物事をありのままに把握し、真理・悟りを見極める認識力)といわれています。 現在の「知恵」(道理を判断し、計画して処理する能力)を仏教では重んじていません。

●「大目揵連」(だいもくけんれん) 正式には、目揵連、略して目連。弟子の筆頭であるため、大がついて大目揵連、摩訶目揵連ともいわれる。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、神通第一(人間の能力を超えた不思議な力)といわれています。

(右写真は、紺紙法華経の巻頭、お説法の図)

●「摩訶迦旃延」(まかかせんねん) 摩訶とは、優れた・偉大な・大きいという意味で単に迦旃延と記されることも多い。出身地である西インドのアヴァンティー国の布教に尽力された。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、論議第一(互いに意見を述べて論じ合うこと)といわれています。

●「阿ぬ楼駄」(あぬるだ) お釈迦さまの従弟で阿那律ともいう。不眠不休で修行した結果、眼を失明したが天眼を得ることが出来ました。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、天眼第一(普通見えないものをも見透す事が出来る能力)といわれています。

●「劫賓那」(こうひんな) 摩訶とは、優れた・偉大な・大きいという意味で、摩訶劫賓那とも呼ばれます。 お釈迦さまの弟子で、星座・天文学暦に優れていた為、知星宿第一といわれています。

●「憍梵波提」(きょうぼんはだい) 憍梵波提は、罪によって過去五百世にわたり牛だったことから牛王という意味があります。 お釈迦さまの弟子で、解律第一といわれ戒律(生活において守るべき規律)を良く理解したといわれています。

●「離波多」(りはた) お釈迦さまの十大弟子の一人である舎利弗の実弟です。 お釈迦さまの弟子で、禅定第一(心を静めて集中すること。瞑想ともいう)といわれています。

●「畢陵伽婆蹉」(ひつりょうかばしゃ) 過去五百世にバラモン(身分制度最上位)の家に生まれたため、傲慢な性格でした。その為に悪口という意味があります。また呪術で名声を得ていたが、お釈迦さまによって呪力を失い出家をしました。

●「薄拘羅」(はくら) お釈迦さまの弟子で、弟子中で病をしなかったので無病第一、また、最も長く生きたので(160歳)長寿第一といわれています。

●「摩訶拘絺羅」(まかくちら) 舎利弗の叔父で、十八大経を学び終えるまで爪を切らなかったので長爪梵志(ちょうそうぼんし)ともいわれていました。お釈迦さまの十大弟子のひとりで、問答第一(問うことと答えること。質問と応答に秀でていた)といわれています。

●「難陀」(なんだ) もとは、牧牛者だったので牧牛難陀ともいわれていました。

●「孫陀羅難陀」(そんだらなんだ) お釈迦さまの異母弟で、父・浄飯王と義理母・摩訶波闍波提の子供といわれています。 容姿端麗で三十相を備え、仏に劣ることわずかに二相(眉間白豪相と耳たぶの垂れがわずかに足りない)であった。

●「富楼那弥多羅尼子」(ふるなみたらにし) 略称は富楼那。那弥多羅尼は母の名前です。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、説法第一(お釈迦さまの教えを説く弁舌に優れている)といわれています。

●「須菩提」(しゅぼだい) お釈迦さまの十大弟子のひとりで、解空第一(事物は縁起によって成り立ち固定的実体がないという空の思想を良く理解した)といわれています。 また、多くの人から尊敬され、沢山のご供養を受けたため、被供養第一ともいわれています。

●「阿難」(あなん) お釈迦さまの従弟で悪人といわれる提婆達多の弟です。阿難陀ともいわれ、歓喜という意味をもっています。お釈迦さまの十大弟子のひとりで、多聞第一(お釈迦さまの付き人をしていたため教えを最も多く聞いた)といわれています。

●「羅睺羅」(らごら) お釈迦さまが王子だった頃に妻・耶輸陀羅との間に生まれた長男で、障碍の意味をもっています。 お釈迦さまの十大弟子のひとりで、密行第一(禁止戒律を良く守り修行した)といわれています。

●「知識」(ちしき) 正しく教え導いてくれる指導者。
人々によく知られている者。

●「大阿羅漢」 「大」とは、とても優れているという意味です。 阿羅漢は前述の通り。